2026/5/24
円安が続きます。
政府が市場介入までしたにもかかわらず、円安の流れを止められていません。
このままいけば円はさらに安くなり、食料やエネルギーなど輸入物価が上がり、家計を直撃します。
また、長期金利もじりじりと上がってきています。
政府債務の利払いが今後、急速に増えて財政を圧迫していくことになります。
経済の体温が冷たかったデフレ、マイナス金利、ゼロ金利、アベノミクスの時代から、インフレ、そして金利のある新しい局面に日本経済が入ったのだという認識のもと、それにあった責任ある経済政策が必要です。
かつて円安だと日本からの輸出価格が低くなって、輸出を増やすことができるから、円安は日本経済にプラスだと言われた時代がありました。
中小の製造業にとっては、円安で銅やプラスチックをはじめ、さまざまな原材料価格が上がり、マージンは減るものの、最終製品の輸出数量が増えるので、部品メーカーも売上、利益が最終的に大きくなった時代でした。
その後、自動車や家電を中心に、日本の製造業が海外に生産拠点を移すと、円安になっても日本からの製品輸出は増えず、多くの中小の部品メーカーにとって円安は、マージンは減り、数量も伸びず、利益にはつながらなくなりました。
ところが海外で売上を上げ、利益を出せる企業にとっては、ドルやユーロで上げた利益を円に転換すると円安で数字が大きくなり、みかけの利益が大きくなります。
インフレで売上が増え、円安もあいまって利益も増えると株価も上がり、日経平均は何度も史上最高値を更新することになりました。
少し前に1ドル100円といっていた時代と比べて、1ドル160円の今日、ドル価格が同じでも輸入品の円価格は1.6倍になります。
日本が海外からの輸入に頼るエネルギーや食料の価格は、現地通貨建てでは横ばいであっても、円安につれて国内価格が上昇します。
年金受給者や所得が低い世帯にとって、円安にメリットはありませんが、円高になればエネルギーや食料品の輸入価格が低下し、可処分所得が増えることになります。
もちろん、円安、円高、それぞれにメリットデメリットがありますが、今日の日本では、円安でホクホクする企業ではなく幅広い世帯の家計が助かる円高基調の経済を目指すべきです。
円を円高基調に戻すためには、小手先の市場介入は全く意味がありません。
まず日銀に対して政策金利の引き上げを牽制するような政府の発信を止め、日銀はゆっくりと、しかし確実に政策金利を引き上げ、政府は財政収支の均衡を実現するという政府と日銀の新しい政策協定を結ぶべきです。
家計における円預金と住宅ローンなどの債務を比較すると、日銀による金利の引き上げは利子収入の増加、家計の総収入の増加につながります。
デフレでゼロ金利、マイナス金利と言われていた時代には、国債の利払いを意識することなく、基礎的収支(プライマリーバランス)の均衡を目指せば事足りましたが、金利のある時代になった今、政府債務の利息の支払いを含めた財政収支の均衡を実現する必要があります。
政府は、ガソリンの暫定税率の廃止によって開いた穴を埋め、防衛予算の引き上げや高校無償化をはじめとする政策経費の増加への対応をしなければなりません。
1990年以降、政府の歳出は歳入を上回り、財政赤字を垂れ流してきましたが、その間、日本経済の潜在成長率も横ばいのまま、経済が好転したわけではありません。
政府がお金を使えば経済が良くなるわけではありません。
むしろ、その間、雇用をはじめとする規制改革やデジタル、AIなどの先端技術の導入が遅れ、新たな産業やサービスが国内で立ち上がらなかったことが、経済成長を妨げてきました。
今回のホルムズ海峡の封鎖を含め、国内のエネルギー価格が上がるたびに、政府は電気、ガス、ガソリンの価格を引き下げるための補助金を出してきました。
たしかにそれは家計にとっては一時的にありがたいことかもしれません。
しかし、そのために政府の財政赤字は大きくなります。
日銀が大量の国債を購入している現状では、政府の財政赤字はインフレを加速させます。
また、本来、エネルギー価格の高騰を受けて、再生可能エネルギーへの転換が進んだり、住宅やビルの断熱が進んだりして、次の危機が来たときには影響が以前より小さくなるはずですが、補助金のおかげでそれが進みません。
結局、次のエネルギー危機でも同じような影響を受けてしまいます。
たしかにガソリン価格が上昇した時に、低所得者や公共交通機関、運輸業界などへの一時的な支援は必要かもしれません。
しかし、ロールスロイスやフェラーリに給油するガソリン価格まで、財政の補助で引き下げる必要はありません。
電気代が高くなったときも、本来は、困窮者への支援などの他、電力使用量を減らすための電気製品の買い換えや断熱工事、屋根置き太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーや蓄電池の導入などを後押しすることによって、輸入エネルギーへの依存を下げ、電力消費量を少なくする政策誘導をするべきです。
価格を引き下げれば消費は減らず、同じ危機が繰り返されます。
エネルギーの補助金だけではありません。
日本は、資本主義経済、市場経済であるはずなのに、政府が資金を提供すれば経済を成長させることができるという勘違いが広がっています。
政府が投資したり、助成をすることによって経済が成長するならば、なぜソ連や東欧の計画経済が崩壊したのでしょうか。
経済を発展させるのは霞ヶ関ではなく、民間企業です。
確かにアジア通貨危機やリーマンショック、東日本大震災、そしてコロナ禍という危機が起きたときは、対応するために政府の財政出動が必要です。
しかし、コロナ禍が終わっても財政規模が元に戻らず、以前には考えられなかった規模の補正予算が平時に組まれています。
デフレ下ではアベノミクスのような財政出動や緩和的な金融政策の意味があったかもしれません。
しかし、インフレ経済の中では、政策転換が必要です。
アベノミクスでも、三本目の矢、規制改革はうまく進みませんでした。
今、日本経済がやるべきは、政府がお金をばらまくのではなく、民間活力を最大限に活用するための規制改革です。
雇用の流動を高めるための雇用ルールの改革、稼げる農業にするための農業への参入規制の改革、海外では当たり前になっている新しいサービスを国内に導入するための参入障壁の撤廃など、やるべきことはたくさんあります。
その一方で、社会問題を解決し、企業の投資を促すための規制も必要です。
例えば今、日本では高齢者の運転による交通事故が跡を絶ちません。
しかし、海外ではすでに自動運転が実用化されています。
自動運転にしても事故はゼロになりませんが、ハンドル操作のミスやアクセルとブレーキの踏み間違えといった事故は現在よりも大きく減り、道路はより安全になるでしょう。
残念ながら日本の自動車メーカーはこの分野で世界から大きく立ち後れています。
自動運転の技術に対して、充分な投資をしてこなかったからです。
例えば令和何年までに、高齢者の自動車の運転を禁止するという規制を導入したらどうなるでしょうか。
レジャーはもちろん、日々の買い物や通院をはじめ、高齢者の移動の必要はなくなりません。
しかし、自分で運転することが禁止されてしまったら、高齢者は自動運転に頼らなくてはならなくなります。
国内に大きな自動運転の市場が誕生します。
自動車メーカーだけでなく、ソフトウェアメーカーをはじめさまざまな企業、スタートアップがこの新しい市場を狙って、投資をするでしょう。
自動運転が事故を起こしたときに批判されるのを恐れてリスクを取ってこなかった警察庁や国土交通省も、今度は反対に、なぜ早く導入を認めないのかと批判されることを恐れて、前向きにならざるを得ません。
今、我々が進めなければならない経済政策は、円という通貨の価値を毀損して家計を苦しめることではなく、政府が無駄なお金を使って長期金利を上昇させ、将来の利払費で財政を破綻させてしまうことでもありません。
民間企業がその可能性を最大限に発揮することができるような規制改革を実行し、人々が安心してこの国で生活していけると思えるセーフティネットを用意して、やる気があれば何回でも挑戦することができる社会の仕組みを作ること、それこそが責任ある経済政策です。
今こそアベノミクスからの経済政策の転換が必要です。
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