2026/5/24
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員

都市の景観を彩り、夏の強い日差しを遮ってくれる街路樹や公共の樹木。しかし今、多くの自治体がこれらを「維持する」のではなく、「伐採して減らす」という選択を迫られていることをご存じでしょうか。
街の緑が減っていく現状に対して、寂しさや疑問を抱く声も少なくありません。しかしその背景には、単に「予算がない」という一言では片付けられない、自治体が抱える「安全管理上のリスク」と「構造的な費用負担の増加」が限界に達しているという深刻な実情があります。今回は、自治体が直面している3つの大きな理由について詳しくひも解いていきます。
日本の都市部にある街路樹の多くは、高度経済成長期(1960~1970年代)に大量に植えられたものです。それから50年以上が経過した現在、これらの樹木が一斉に「巨木化・老朽化」を迎えており、都市インフラと衝突する様々なリスクを生み出しています。
外見は立派に見えても、幹の内部が腐食して空洞化している老木が少なくありません。こうした木が台風やゲリラ豪雨、あるいは何の前触れもなく突然倒れる事故が全国で相次いでいます。万が一、通行人や走行中の車に直撃した場合、人命に関わる重大事故となり、自治体は莫大な損害賠償責任(公の営造物の設置管理瑕疵)を負うことになります。
大きく成長した木の根が、アスファルトの舗装を押し上げて歩道をボコボコにしてしまう「根上がり」が多発しています。これは高齢者やベビーカー、車椅子の転倒事故に直結する非常に危険な状態です。限られた人員で修繕が追いつかない場合、自治体は安全確保のために「木を抜く」という判断をせざるを得ません。
枝葉が大きく伸び放題になると、道路標識や信号機が見えづらくなり、交通事故を誘発する原因になります。また、街路灯を覆い隠して夜道を暗くしてしまい、防犯上のリスクを高めるケースや、電線に接触して停電を引き起こす危険性も指摘されています。
樹木はインフラ設備の中でも特殊で、「植えて終わり」ではなく、大きくなればなるほど将来のメンテナンス費用が跳ね上がるという性質を持っています。
木が巨木化すると、通常の作業では手が届かなくなり、高所作業車の手配や専門の職人による作業が必要不可欠になります。これにより1本当たりの剪定コストが急増します。ある研究データによると、植栽の管理費用が20年間で7倍以上に膨らんだという極端な事例もあるほどです。
現在、多くの自治体が人口減少や少子高齢化に伴う社会保障費の増加により、深刻な財政難に直面しています。予算全体の枠が削られる中で、「道路の白線をノンストップで引き直す」「老朽化した橋や水道管を直す」といった、命に直結する他のインフラ維持が最優先されます。その結果、平時における「街路樹の維持管理予算」は真っ先に削減対象になりやすいのが現状です。
現場の職員が最も頭を悩ませているのが、周辺の住民や店舗から寄せられる切実な苦情への対応です。
秋から冬にかけて発生する大量の落ち葉が、「自宅の敷地内に入り込む」「雨樋に詰まって雨水があふれる」といったクレームが毎年絶えません。また、春から夏にかけては毛虫などの害虫が発生し、近隣へ被害を及ぼすこともあります。「市が植えた木なのだから、毎日掃除や消毒に来てほしい」という要望をいただいても、人手不足の自治体にはそこまでの対応能力はありません。結果として、苦情の根本原因を解決するために伐採するという選択に至ることがあります。
雨の日に歩道に積もった落ち葉は、水分を含んで非常に滑りやすくなります。歩行者や自転車、ミニバイクなどが転倒するリスクを未然に防ぐためにも、安全管理の観点から伐採が選ばれるケースがあります。
こうした課題を背景に、現在の多くの自治体では、街路樹の総数を間引いて適正な数にコントロールする「街路樹再生計画(適正化計画)」が進められています。
景観や環境配慮のためにどうしても緑を残す必要がある場所については、従来の大型になる樹種から、ハナミズキのように「成長が遅く、根があまり広がらず、剪定コストを抑えられる小型の品種」への植え替えが進められています。これにより、都市の安全性を確保しながら、将来的な財政負担を最小限に抑える工夫がなされています。
| これまでの街路樹(大型種など) | これからの街路樹(ハナミズキなど) |
|---|---|
| ・豊かな木陰を作るが、巨木化しやすい ・剪定や落ち葉処理のコストが高い ・根上がりによる歩道舗装の破壊リスク |
・成長が比較的遅く、管理しやすい ・コンパクトで剪定費用を抑えられる ・根が広がりにくく、インフラを傷めにくい |
自治体の立場としても、「緑をただ減らしたい」わけでは決してありません。市民の皆様の安心・安全を守るという義務と、限られた財政予算、そして現場に寄せられる苦情との間で板挟みになった結果、苦渋の決断として伐採や樹種の変更を進めているのが実態です。
気候変動による猛暑対策として「木陰」の重要性が改めて見直される一方で、それを維持するためのコストとリスクをどう社会全体で支えていくのか。私たちは今、これからの持続可能な街づくりのあり方を真剣に考える転機を迎えています。
| 小森さだゆき | 参政党 / 高槻市議会議員
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