2026/1/24
東京23区のごみ計画の策定が、実は1年間止まっていたことをご存じでしょうか。
この話を理解するためには、まず東京23区のごみ行政の仕組みを押さえておく必要があります。23区のごみ処理は、一般に思われているほど単純ではありません。
役割は大きく三つに分かれています。各区は家庭ごみの収集と区民対応を担い、清掃一部事務組合(以下、清掃一組)がごみの焼却を担います。そして、焼却後に出る灰の最終処分(埋立)を東京都が担っています。
この「真ん中」に位置するのが清掃一組です。清掃一組は東京都の外局でも、特定の区の下部組織でもありません。23区すべてが共同で設置し、意思決定も責任も、23区の合議によって行われる組織です。

清掃一組は、焼却施設の整備や運営の前提となる「一般廃棄物処理基本計画」を策定しています。その第6次計画は、本来、令和7年度に策定される予定でした。
しかし、この計画は当初の予定どおりには策定されませんでした。
理由は、区長会が清掃一組とは別に、独自でごみ排出量の将来推計などを検証する必要があるとして、外部有識者等のよる検証委員会を立ち上げたためです。
焼却能力の拡大を含む清掃工場整備の規模や時期について、建築費の高騰や今後のごみ減量施策の効果を踏まえ、より丁寧な検証を行うための措置でした。
清掃一組が示してきた従来のごみ排出量推計について、区長会としても独自に確認し、納得したうえで次期計画を策定したい、ということです。
この判断により、第6次一般廃棄物処理基本計画の策定は、結果として1年先送りとなりました。
検証委員会は、昨年10月に区長会に対して答申を提出しています。その内容は、昨年12月の区長会で審議されました。
江東区の所管からの説明によると、第6次計画の策定にあたっては、清掃一組がこれまで用いてきたごみ排出量推計を、ほぼそのまま用いる方向となったとのことです。つまり、1年をかけて検証を行ったものの、計画の前提条件自体は大きく変わらなかった、ということになります。
近々、この第6次一般廃棄物処理基本計画は、清掃一組において正式に決定される予定です。
検証委員会をめぐっては、その検討内容や答申が現時点では公表されていない点について、区議会の委員会でも問題提起がなされています。
令和7年12月10日の清掃港湾・臨海部対策特別委員会において、私自身も、検証委員会でどのような議論が行われ、どのような答申が区長会に示されたのかについて、区議会や区民に情報が共有されていない状況を指摘しました。
これに対し所管からは、答申内容が区長会での意思決定に大きく関わるため、現段階では公表していないとの説明がありました。一方で、検証委員会での議論は、清掃工場整備やごみ処理体制の将来像に直結するものであり、その影響は23区の中でも、特に江東区が大きいと考えられます。
だからこそ、区長会としての方向性が定まり次第、速やかに検証委員会の検討内容や答申について、区議会に対して説明がなされるべきであるという点を、委員会の場で要望しました。
結果だけを見ると、「なぜ1年をかけたのか」「この1年で何が変わったのか」という疑問が残ります。
もちろん、検証というプロセス自体を否定するものではありません。一方で、この1年が技術的な検証の時間だったのか、それとも意思決定を先送りするための時間だったのかについては、冷静に振り返る必要があるように思われます。
清掃一組と区長会は、ともに23区全体を代表する合議体です。しかし、各区が置かれている立場は一様ではありません。清掃工場を抱える区とそうでない区、ごみ処理量の多い区と少ない区など、状況には大きな差があります。
その中で、誰かが前に出て判断を示せば、別の誰かが「責任を負わされる側」になる構図が生まれます。合議制の組織において、不人気で負荷の大きいごみ問題ほど、判断が慎重になりやすい理由でもあります。
第6次一般廃棄物処理基本計画をめぐるこの1年は、東京23区のごみ行政が抱える構造を、そのまま映し出したものだったのかもしれません。
判断を誤らないために慎重になることと、判断そのものを先送りすることは、似ているようで異なります。その違いをどう埋めていくのかは、今後の23区のごみ行政にとって、避けて通れない課題だと考えています。


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