2026/2/28

江東区は令和8年度予算案において、拠点避難所69か所の公衆無線LAN維持管理事業に約5,009万円を計上し、バックボーン回線と機器構成の変更を打ち出した。機器はWi-Fi6対応にアップデートされる一方、回線はフレッツ光(固定回線)からモバイル回線(ホームルーター型)に切り替えられる。
機器性能の向上は評価できるが、問題はバックボーン回線の方にある。
本事業の目的は、大規模災害時に避難所で区民が通信できる環境を確保することだ。しかし今回の構成では、携帯基地局が被災すれば避難所のホームルーターも同じ携帯回線であるため使えなくなる。逆に基地局が無事であれば、避難者は自身のスマートフォンで通信でき、避難所Wi-Fiの必要性は低い。「使えるときには必要ない、必要なときには使えない」構成となる懸念がある。
さらに深刻なのは、通信の冗長性がむしろ後退する点だ。現行のフレッツ光は携帯基地局とは独立した通信インフラであり、携帯網がダウンしても別系統として機能し得た。今回の変更により、避難者のスマートフォンも避難所Wi-Fiも同じ携帯基地局に依存することになり、通信手段が単一の障害点に集約される。

この問題は2年前の令和6年度予算審査特別委員会でも取り上げられており、当時から回線容量の不足と災害時の断線リスクが指摘されていた。区側も「通信手段の多様化は重要であり、衛星通信サービスについても調査研究する」と答弁していた経緯がある。
今回の令和8年度予算審査特別委員会でも質疑が行われ、区は「固定回線が持つインフラとしての独立性に比べ、通信の冗長性の観点では課題が残る」と認めた。一方、「能登半島地震を踏まえ、携帯電話事業者間の連携が強化されており、移動基地局車による復旧体制も年々強化されている」との説明もあった。
対案として挙がったのが衛星通信(スターリンク)との二重化だ。令和6年度に東京都から江東区に1台が配備され、防災センターでの接続テストでは「地上インフラに依存しない衛星通信として、災害時に一定の有効性と強靱性を有する」ことが確認されている。筆者も昨年の江東区総合防災訓練においてKDDIの災害用スターリンクに実際に接続し、約40Mbpsの速度を確認した。本部と現場の連絡、写真送付、情報発信といった緊急通信には十分な性能といえる。

区は衛星通信との二重化について「通信手段の独立性が高まり、冗長性が確保される」と認めつつも、2年前と同様「引き続き調査研究を進める」との答弁にとどまった。一方、導入予定機器および衛星通信について契約前に実機テストを実施し、結果を議会に報告することについては前向きな答弁が得られている。
今後は、実機テストが実施されるか、またその結果を踏まえて衛星通信との二重化に踏み込めるかが焦点となる。

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ホーム>政党・政治家>中島 ゆうたろう (ナカジマ ユウタロウ)>江東区、避難所Wi-Fiを携帯回線に一本化へ ―5千万円で災害時の通信冗長性は後退しないか