2026/5/22
ナフサを「戦略物資」として扱う制度設計を急ぐべき・・・流通在庫の見える化を、今国会で。
ホルムズ海峡をめぐる緊張が続く中、日本の産業の足元で、静かに、しかし確実に深刻な事態が進行しています。
国内ナフサ在庫は20日程度との報道もあり、供給余力の低下が懸念されています。国内エチレン設備でも、減産や稼働調整の動きが広がっています。ナフサ調達の大宗を中東地域に依存している現状があります。プラスチック、医療資材、半導体材料、自動車部品、住宅資材。私たちの暮らしを支える素材のほぼすべてが、この供給ラインの先にあります。
政府は4月10日、中東情勢を踏まえた対応方針を発表し、米国・アルジェリア・ペルー等からの代替調達を打ち出しました。さらに、経済産業省は石油・天然ガス由来の化学品を、経済安全保障推進法の「特定重要物資」に指定する方向で検討に入ったと報じられています。
方向性は正しい。しかし、供給リスクの拡大スピードに対し、制度対応が追いついていない印象は否めません。
私が訴えたいのは、次の一点です。
ナフサ流通在庫の「見える化」体制を、今国会会期中に法制度として整えるべきだ。
制度整備が危機発生後になるのでは遅く、平時と有事の境目が曖昧になっている今こそ、先回りした制度設計が必要です。
現行制度を確認しておきます。石油備蓄法は、ナフサを「指定石油製品」として販売事業者の届出・報告徴収・立入検査の対象に含めています。つまり、制度の基礎的な枠組みは既に存在しています。
問題は、「備蓄」の実務が燃料(ガソリン・軽油・灯油・重油)優先で運用されており、ナフサの流通動態を政府がリアルタイムで把握する仕組みが弱いことです。
国家備蓄が放出されても、その多くは製油所でガソリン等の燃料向けに振り向けられます。化学原料としてのナフサへ十分に回りにくいという実態が、今回の危機で改めて顕在化しました。
提案する制度設計は、3点です。
第一に、特定重要物資指定の前倒し。2026年度目標と報じられていますが、有事が現在進行形である以上、政令指定を年内に前倒しすべきです。
第二に、流通在庫の動態把握体制の整備。元売、輸入商社、タンク事業者、石化メーカー、物流事業者から、在庫量・入港予定・出荷予定・タンク容量を、平時は週次、有事は日次で政府に報告させる仕組みです。
第三に、企業別在庫情報の公開ではなく、〔政府内部での需給把握と優先供給判断〕に絞った運用です。企業別在庫をリアルタイムで公開すれば、買い占め、投機、企業機密流出を招きかねません。政府が把握し、必要時に調整する。これが現実的な制度設計だと考えます。
この提案にはご心配もあろうかと思いますが、対応可能だと考えています。
「企業の報告負担が増える」というご指摘には、既存の石油備蓄法上の報告と一本化し、電子報告で簡素化することで対応可能です。
「企業情報の漏洩リスク」については、報告先を経済産業省内の限定部署に絞り、目的外利用を禁ずる規定を法定すれば、一定の対応は可能です。
「自由経済への過剰介入」というご懸念には、平時は緩く、有事に強化する「段階発動型」の制度設計でお応えできます。
私の地元・北九州は、響灘臨海工業地帯と関門・洞海湾を擁する、西日本における石油化学と物流の結節点です。地元の中小製造業の皆さまからは、「樹脂原料の値上がりが止まらない」「納期が読めない」という声を、この2か月、繰り返し伺ってきました。これは他人事ではなく、北九州の産業基盤そのものに関わる問題です。
政府には、「特定重要物資指定の年内前倒し」と「「流通在庫見える化法案」の今国会提出」を求めます。
国会には、与野党を超えた集中審議を求めます。経済安全保障は、特定の党派の専有物ではありません。
私自身、北九州の現場の声を踏まえながら、引き続き政策提言と制度改善に取り組んでまいります。
石油化学は、単なる素材産業ではありません。医療、物流、住宅、半導体、自動車など、国民生活そのものを支える基盤です。
今求められているのは、「不足してから慌てる」のではなく、「不足する前に備える」国家としての危機管理だと考えます。
前衆議院議員 きいたかし 福岡10区(北九州市門司区・小倉北区・小倉南区)

この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>きい たかし (キイ タカシ)>ナフサを「戦略物資」として扱う制度設計を急ぐべき・・・流通在庫の見える化を、今国会で。