2026/7/26
先日、大阪ねこの会主催、串田誠一参議院議員による講演「命の授業in大阪」に参加しました。
前回は、環境省案における「イエネコ」表記、大阪のTNR、イスタンブールの地域猫、愛護動物の緊急一時保護などを紹介しました。
今回は、講演の中心テーマの一つであった、アニマルウェルフェアについて考えます。

アニマルウェルフェアは、人間が動物を利用することをすべて否定する考え方ではありません。
世界動物保健機関(WOAH)は、アニマルウェルフェアについて、「動物が生き、死ぬ環境との関係における身体的・精神的状態」と定義しています。
判断の基本となるのが「5つの自由」です。
・飢えや渇きからの自由。
・恐怖や苦悩からの自由。
・暑さ、寒さ、不快からの自由。
・痛み、けが、病気からの自由。
・その動物本来の行動を表す自由
です。
つまり、水と餌があり、生きてさえいれば問題ない、では通りません。

講演で強く問題提起されたのが、日本の学校現場でよく飼育される、ウサギです。
外気温が35度を超える中、厚い毛に覆われたウサギが屋外の小屋にいる、仮に日陰があっても、風通しが悪く、地面からの照り返しが強く、水がぬるくなっていれば、安全とは言えません。
文部科学省が2024年に行った学校飼育動物の実態調査では、回答した公立小学校の約6割が動物を飼育していました。
対象となる哺乳類、鳥類、爬虫類を飼育する292校のうち、ウサギを飼う学校は164校で最多でした。
一方で、
という結果も出ています。
休日分の餌を前日に多く置くだけ、という回答もありました。
子どもは「命を大切に」と教えられるだけでなく、大人が実際に命をどう扱うかを見ています。
暑さで弱っている動物を見ながら、「昔からこうしている」「死んでいないから大丈夫」などと説明すれば、苦痛に気づいても見過ごすことを教える結果になりかねません。
私は八尾市教育委員会へも、市内の小中学校で、どの動物を何匹飼育しているのか、学校を責めるためではなく、現場任せにせず、必要な支援につなげるため、休日や猛暑時の管理、獣医療との連携、必要な設備や予算について確認したいと考えています。

もう一つ大きなテーマとなったのが、採卵鶏です。
日本では、採卵鶏の9割を大きく超える鶏が、金網床の狭い、「バタリーケージ」で飼育されているとされています。
バタリーケージは、採卵、個体管理、衛生管理を効率化し、卵を安く安定的に供給する利点があります。
一方でバタリーケージ内の鶏は、歩く、羽を広げる、止まり木に止まる、巣にこもって産卵する、地面をつつく、砂浴びをするといった、本来の行動をほとんど行うことができません。
EUでは2012年から、止まり木や巣箱を備えていない従来型のバタリーケージは禁止されています。

日本の卵は、長く「物価の優等生」と呼ばれてきました。
その安さは、養鶏農家の努力と効率的な大量生産によって支えられてきました。
管理の容易なバタリーケージから、平飼いやエイビアリーといった飼育方法への転換には、鶏舎の改修、広い土地、床材、ふん尿処理、疾病管理、人手が必要です。
農林水産省の資料では、一定の条件下で、平飼い卵の生産費がバタリーケージの約2.4倍となる試算例も示されています。
消費者が安さだけを求めながら、生産者だけに設備転換を求めても、平飼いは広がりません。
講演では、消費者に対し、「毎回でなくても、10回に1回、平飼い卵を選ぶという選択肢はどうか?」という提案もありました。
こうした新しい飼育方法での卵の購入が増えれば、売り場が広がり、農家が設備投資をする動機にもなります。

店頭では、卵はサイズと価格で並びます。
しかし、その卵を産んだ鶏が、どのような環境で暮らしていたのかは、ほとんど見えませんが、鶏にも個体差があり、警戒し、安心し、周囲を探索します。広い環境では人に近づき、腕に飛び乗るほど懐く鶏もいるそうです。
畜産現場を一方的に責めるためではなく、商品になる前に、一羽の動物がいた、という事実を消費者が想像し、表示を読み、生産方法を知り、可能な範囲で選択を変えることが、消費行動とアニマルウェルフェアの接続にとって重要です。

日本の食鳥処理の現場の課題として、首切りや放血、死亡確認が不十分な場合、生命反応が残ったまま、羽を抜くための湯漬け工程へ進む点も、ご講演の中で問題提起がありました。
国の統計では令和3年度に、約55万羽が「放血不良」として食用不適となり、廃棄されたとのことです。
この数字すべてについて、意識のあるまま鶏達が湯漬けされたことを直接示すものではありませんが、屠畜・放血前に意識を失わせるスタニングの実施と、放血後の確実な死亡確認が、これら食用不適となる鶏を生まない為の抜本的対策です。
苦痛を与え、最後は商品にもならず廃棄される鶏が沢山居るという残酷な現実、日本人が大切にしてきた「もったいない」という感覚からも、今後の制度を考えるうえで議論すべき問題です。

ご講演では、iPS細胞、オルガノイド、臓器チップなど、動物実験を代替・削減する技術も紹介されました。
動物と人間には「種差」があり、動物で安全でも人間には危険な場合や、動物では有効性が確認できなくても、人間には異なる作用を示す可能性があります。
ヒト由来の細胞や臓器モデルを活用すれば、動物の使用を減らすだけでなく、創薬の予測精度を高められる可能性もあります。
日本が強みを持つiPS細胞技術を、動物実験代替と新薬開発につなげることは、動物福祉と日本の研究開発力向上、産業振興を両立する可能性を持っています。
国の法改正を待つ間にも、現行制度の運用や消費者の選択によって救える命があります。
「生きているから大丈夫」ではなく、「どのように生きているのか」を見る。
アニマルウェルフェアは、動物だけの問題ではなく、私たち日本人が、命とどう向き合う社会をつくるのかという問題であると、今回の貴重な機会を通じて痛感したため、一人でも多くの人にこれらの事実を知って頂きたく、記事にまとめさせて頂きました。
今回のような法律や地方行政、身近なテーマに関する議論の紹介、大阪府政、地方自治の仕組みについて、YouTubeでも解説しています。
統計データや公的資料、法律・条例・行政運用など、議会活動の現場で得た視点をもとに、できるだけ分かりやすく発信していきます。
是非チャンネル登録のうえ、ご覧下さい。
▶ YouTubeチャンネルはこちら
https://www.youtube.com/@ina_policy
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>稲森 洋樹 (イナモリ ヒロキ)>「生きていれば、それでいいのか」学校ウサギと平飼い卵から考える動物福祉