上野 がく ブログ

鎌倉地域漁業支援施設の工事受注者から2026年4月末に契約解除が通知されました。

2026/5/22

1 はじめに
2026年5月21日開催の鎌倉市議会の総務常任委員会において、鎌倉地域漁業支援施設整備事業の防波堤工事受託事業者から契約解除通知が今年4月末に届いていたことが明らかになりました。
この件について、情報を整理します。
 

鎌倉地域漁業支援施設の完成予定図


 

2 鎌倉地域漁業支援施設を整備する理由
この事業は、坂ノ下に漁業用の①防波堤②船揚げ場③漁具倉庫④共用棟を新たに作り、漁業者の就労環境改善などを行うものです。
1953年に坂ノ下漁業協同組合から「坂ノ下防波堤設置に関する請願」が議会に提出されたところから経緯がある話です。
市の西部の腰越地域には腰越漁港があります。
しかし、市東部の鎌倉地域には港がないために、漁業者は今でも砂浜から漁船を出し入れしています。作業に危険が伴うことや一定程度の波の高さにより操業できなくなること、そもそも大変な重労働となっている現状があります。
過去には、台風により浜辺にある漁具倉庫が損傷する被害を受けたこともあります。
こうしたことから、漁業支援施設の整備を決めたものです。

 

3 整備計画
2025年度に工事を始め、2031年度の完成を予定しています。次のような工程で工事を進める予定になっています。
2025年度~2027年度:防波堤改良工事(神奈川県が整備した既存の突堤をより波が防げるような構造に改良します)
2026年度~2029年度:護岸工事(漁業支援施設の基礎となる護岸を整備するため、埋立工などを行います)
2030年度~2031年度:漁具倉庫等建築物建設工事(漁業支援施設内の建物を建設していきます)
 

4 鎌倉市議会での経過
2025年2月定例会で2025年度当初予算と5年間の継続費を可決し、2025年6月定例会で最初の工事である防波堤工事の契約案を可決しました。
上野は2025年5月15日から鎌倉市議会議員となっており、予算が認められていることを尊重して、契約案に賛成しました。
工事請負者はユタカ建設株式会社で、契約額は8億9千1百万円、契約期間は2028年3月までです。
その後、地域住民に対する説明を行っていく中で、住民側から次の問題提起がなされました。
現在の工法では既存の波返し護岸(陸側に海水が浸水しないようにする壁)を撤去し、防波堤工事を行い、その後に新たな波返し護岸を設置することになっているが、波返し護岸を撤去してから新設するまでの間に、高波被害の恐れがあるので、問題があるということです。
そこで市は高波対策として、海上に高波の緩衝帯となる35メートルの仮設ヤードを設置した上で、既存波返し護岸を撤去するように工法を変更することにします。

市は2025年12月議会に工法変更に伴う工事請負契約の1千万円の増額契約案を提出しますが、議案の付託先の総務常任委員会において、12月16日、中澤克之委員(会派「公正と法」所属)から閉会中継続審査とするべきとの動議がありました。
取扱いについて採決を行った結果、
「継続審査」3人<中澤克之委員、重黒木優平委員(会派「公正と法」所属)、松中健治委員(無所属)>
「結論を出す」2人<上野学副委員長(会派「鎌倉前進の会」所属)、中村聡一郎委員(会派「自民党・無所属の会」所属)>
となり、継続審査となりました。
継続審査となると、議案が本会議に戻らないことから、本会議で採決することができないため、市は契約の変更ができなくなりました。
市は2026年1月臨時会において、先に提出していた契約変更議案を取り下げました。
 

2025年12月16日総務常任委員会

5 契約解除通知の取扱いはどうなるか
市の説明は次の通りでした。
・工事請負契約書に基づき、第54条(受注者の催告によらない解除権)の定めで、
①市が設計変更したために請負代金が3分の2以上減少したとき
②天災等又は市の指示で工事を中止した期間が、全体の工期の半分又は6月のどちらかを超えたとき
の2つの場合は、受注者が直ちに契約を解除できることになっている。
・一方で、その事由に該当しない場合に、受注者が契約を解除したときは、受注者は市に違約金(請負代金額の10分の1)を支払わなければならない。
・今回提出された解除通知の内容や第54条に定める解除事由の事実があったかどうかについては、認識を含めて明らかにできない。
・理由は、現段階では、受注者との円満な協議を行って、整備事業を予定通り進めることを目指しており、市側の認識を明らかにすると協議に支障を及ぼし、結果として市民にとっても不利益となる恐れがある。

市が明らかにできないと主張した理屈は、鎌倉市情報公開条例において行政文書の公開の対象外とする「審議等に関する情報」に同等であるとして、妥当と言えなくはないと考えます。
すなわち、これから受注者と話し合い(場合によっては訴訟)をするのに、市側の手の内を明らかにするのは不利という理屈です。
一方で、上野は解除通知の内容を見ていないので、確かにそうであると判断することもできない状態です。

(参考)鎌倉市情報公開条例
(行政文書の公開義務)
第6条 実施機関は、公開請求があったときは、公開請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「非公開情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、公開請求者に対し、当該行政文書を公開しなければならない。
第3号(審議等に関する情報)
実施機関並びに国の機関、独立行政法人等、他の地方公共団体の機関及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、公開することにより、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ、不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれ又は特定の者に不当に利益を与え、若しくは不利益を及ぼすおそれがあるもの
 

6 おわりに
防波堤工事については、予定通り終わらない可能性が出てきましたが、市の説明では、護岸工事は防波堤工事とは独立して実施可能とのことで、全体としての鎌倉地域漁業支援施設の完成は計画通り進めたいとのことでした。
資材、エネルギー価格、人件費高騰の中で、計画が遅れれば遅れるほど、費用が多額になると想定されます。
市は計画通りに進捗させるため、受注者としっかりと協議を行うほか、協議が上手くいかなかった場合を想定し、引き継ぐことのできる業者を模索してもらいたいです。
また、仮に受注者が契約に定める事由によらない解除となった場合には、市民の財産が損なわれたことになりますから、違約金の請求など法的対応を行う必要があります。

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著者

上野 がく

上野 がく

肩書 鎌倉市議会議員(1期)、総務常任委員会副委員長、会派「鎌倉前進の会」所属、元神奈川県職員、町内会役員(防災部長)、防災士
党派・会派 無所属

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