2026/7/28

令和8年7月21日、政府は「骨太の方針2026」を閣議決定しました。
骨太の方針とは、国がこれからどのような政策に力を入れ、予算を配分していくのか、その大きな方向を示すものです。
今回、農業については「食料安全保障の強化」が大きな柱として掲げられました。
少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、
これからも国民に食料を安定して届けられるよう、国内で農業を続けられる体制を守る
ということです。
私たちが毎日食べる米や野菜を、将来は誰がつくるのか。
地域の農地や水路を、誰が守っていくのか。
農業は農家だけの問題ではなく、私たちの食卓や地域の暮らしに関わる問題です。
現在、日本の食料自給率はカロリーベースで38%です。
私たちが食べている食料の多くを海外からの輸入に頼っています。
しかし、世界情勢の変化や気候変動、災害、円安などによって、海外から食料や肥料、飼料などが、いつでも安定して入ってくるとは限りません。
さらに深刻なのが、国内で農業をする人の減少です。
全国の基幹的農業従事者は、令和2年から令和7年までの5年間で約34万人減り、約102万人となりました。5年間でおよそ4人に1人が減った計算です。
平均年齢も67.6歳となっています。
農地があっても、耕す人がいなければ食料はつくれません。
だからこそ政府は、農業を食料安全保障の基盤として位置付け、国内で食料を生産する力を維持しようとしています。


政府は、令和7年度から令和11年度までの5年間を、農業を大きく変えていく集中期間としています。
主な取組は、次のようなものです。
農業者が減っていく中でも、機械や技術を活用し、少ない人数で生産を続けられる農業へ転換しようという考え方です。
こうした方向性は必要だと思います。
一方で、農地をまとめたり、新しい機械を導入したりするだけで、農業が続けられるわけではありません。
最も重要なのは、農家の経営と生活が成り立つかどうかです。

今回、農家にとって特に大きいのが、令和9年度から予定されている水田政策の見直しです。
これまでの制度では「水田で何をつくったか」を基準に支援する面がありました。
これからは、水田か畑かではなく、作物ごとの生産性や収穫量を重視した支援へ変えていく方針です。
対象として想定されているのは、米粉用米、加工用米、輸出用米、麦、大豆、飼料作物などです。
一方、普段、私たちがご飯として食べる主食用米は、この支援の対象にはなりません。
地域によって農地の条件や気候は違います。大雨や高温、渇水などによって、農家の努力だけでは収量を増やせない場合もあります。
政府は地域差や災害に配慮するとしていますが、具体的な支援額や条件は、これから決まります。
収穫量を重視することで、条件の悪い農地や小規模な農家が不利にならないか、丁寧に確認する必要があります。
ここが、今回の記事で最もお伝えしたい点です。
現在も、災害や価格下落などによって農家の収入が大きく減った場合に、その一部を補う制度があります。
しかし、農家の所得を一定水準まで保証する制度ではありません。
「収入」と「所得」は違います。
収入とは、農産物を売った金額です。
所得とは、そこから肥料、農薬、燃料、種、資材、農業機械などの費用を差し引き、農家の手元に残る金額です。
例えば、農産物の売上が500万円で前年と変わらなくても、必要な経費が300万円から400万円に増えれば、所得は200万円から100万円に減ります。
売上は減っていませんが、農家の手元に残る金額は半分です。
現在の収入減少を補う制度では、こうした経費の増加による所得減少が、そのまま補償されるわけではありません。
骨太の方針2026では、米や野菜などについて、生産にかかった費用を販売価格へ適切に反映させる方針も示されました。
農家が次の作付けを続けられる価格にすることは重要です。
一方で、農産物の価格が上がれば、市民の家計にも影響します。
生産者だけに負担を求めるのでも、消費者だけに負担を求めるのでもなく、生産、流通、販売のそれぞれで、費用や利益がどうなっているのかを分かりやすくする必要があります。

骨太の方針2026には、令和9年度から「稲作農家のセーフティネット対策」を講じることも盛り込まれています。
セーフティネットとは、米価の下落や収入の減少などによって、農家の経営が大きな打撃を受けないよう支える仕組みです。
ただし、現時点では、誰が対象となり、どの程度支援され、農家自身がどれだけ負担するのか、具体的な内容は示されていません。
そのため、
骨太の方針2026によって、新しい農家の所得補償制度が始まる
ということではありません。
新たな支援の方向は示されましたが、制度の中身はこれからです。
本庄市では、米や麦のほか、キュウリ、ナス、タマネギ、レタス、ブロッコリー、カリフラワー、やまといも、いちご、花、畜産など、多様な農業が営まれています。
一方、本庄市の総農家数は、平成12年の2,165戸から令和2年には1,249戸となりました。
20年間で、約4割減少しています。
農家が減るということは、農作物をつくる人が減るだけではありません。
草刈りや水路の清掃、農道の維持など、地域の農地や環境を守る人も減るということです。
残った農家が多くの農地を引き受ければ、水管理や草刈り、機械の更新、働く人の確保などの負担も集中します。
農地を集めることと、実際に農地を守り続けられることは、同じではありません。

私自身も現在、水稲やブロッコリーの栽培に取り組み、農業を学んでいます。
実際に関わってみると、農業は作物を植えて収穫するだけではないことを実感します。
天候や気温を見ながらの水管理、草刈り、肥料や資材の選定、農業機械にかかる費用など、外から見ているだけでは分からなかった負担が数多くあります。
そして、農家の皆さんが長年積み重ねてきた経験と技術によって、私たちの食卓と地域の農地が支えられていることを改めて感じています。

国が制度をつくっても、本庄市の農家が利用できなければ、地域の農業を守ることにはつながりません。
本庄市としても、
といった取組みが必要です。
市民に最も近い市議会議員として、国の政策を紹介するだけでなく、本庄市の農家が実際に利用できるのか、所得や営農の継続につながるのかを確認していきます。
骨太の方針2026では、農業を食料安全保障の基盤として位置付け、農地の集約化、スマート農業、水田政策の見直しなどを進める方針が示されました。
これは、今後の農業を考えるうえで重要な一歩です。
しかし、本当に大切なのは、農家が農業を続けられるかどうかです。
農地や機械があっても、農家の経営や生活が成り立たなければ、次の世代へ引き継ぐことはできません。
食料安全保障とは、単に食料を備蓄することではありません。
地域で農業を続ける人がいて、農地が守られ、私たちの食卓へ食料が届く。その仕組みを将来にわたって守ることです。
国の新しい方針が、本庄市の農業にどのような影響を与えるのか。
今後も農家の皆さんの声を聞きながら、市民の皆さんにも分かりやすくお伝えしていきたいと思います。

【主な参考資料】
・内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」
・農林水産省「新たな水田政策(コメの中長期対策)の基本的考え方・仕組み」
・農林水産省「経営所得安定対策等の概要(令和8年度版)」
・農林水産省「農業経営の収入保険」
・農林水産省「2025年農林業センサス」
・本庄市総合振興計画 後期基本計画
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>原 よしのり (ハラ ヨシノリ)>骨太の方針2026で農業はどう変わる?