2026/6/5
トランプ大統領は、AI企業が政府にフロンティアAIモデルへの事前アクセスを任意で提供するという枠組みを盛り込んだ大統領令の署名を、直前になってキャンセルしました。草案はPoliticoを通じてリークされ、全文が明らかになっています。
◆草案の主要内容(5つの柱)
① 米国システムのAI対応強化(第2条)
大統領令発令から30日以内に、国防情報システム・連邦政府民間システム・重要インフラ(農村病院・地方銀行・地方公共事業体)を対象としたサイバー防衛の強化と、AIを活用した防衛ツールの拡充を指示。財務省主導の「AIサイバーセキュリティ情報共有センター」を設立し、脆弱性の検知・パッチ配布を官民で協調して行う枠組みを構築する内容です。
② フロンティアモデルの安全展開(第3条)
AI企業が「カバード・フロンティアモデル」(最先端AIモデル)を一般公開の最大90日前に、機密保持・サイバーセキュリティ・知的財産保護の条件のもとで連邦政府に任意提供できるボランタリー枠組みを設計するよう指示。政府はそのモデルを用いて重要インフラのサイバーセキュリティを強化する「信頼できるパートナー」を選定します。
③ 強制規制の明示的否定(第3条(c))
草案には「本条のいかなる内容も、新たなAIモデルの開発・公表・リリース・配布に対して、政府による強制的なライセンス付与・事前許可・許認可制度の創設を認めるものと解釈されてはならない」と明記されており、あくまで任意参加であることを強調しています。
④ 犯罪行為への対処(第4条)
AIを悪用したサイバー犯罪・不正アクセス・詐欺行為について、司法長官が厳格に連邦刑法を執行することを指示。
⑤ 基本方針
「米国がAIで世界をリードし続けるため、過度な規制でイノベーションを抑制しない」というアメリカ・ファーストの原則を明示。
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なぜ署名されなかったのか
AIツァーのデイビッド・サックス氏が水曜夜にトランプ大統領に直接働きかけ、「AI企業はすでに政府に協力しており、いかなる連邦審査プロセスもイノベーションを遅らせ、AI競争で中国に優位を与えるリスクがある」と主張。またボランタリーな枠組みがいつか強制的な審査に変わる懸念も伝えました。
トランプ氏自身も「一部が気に入らなかった。我々は中国をリードしており、それを妨げたくない」と述べています。さらに署名式典に参加予定だった主要AIのCEOたちが、代わりに下位幹部を派遣することになったことも、撤回の背景にあったと報じられています。皮肉なのは、草案が任意参加であることをこれほど強調していたにもかかわらず、トランプ政権がなぜ土壇場で翻意したのかは依然として謎だという点です。
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政治的背景
一方で、スティーブ・バノン元首席戦略官ら60人以上の保守派指導者は、トランプ大統領に対し署名を促す書簡を送り、「潜在的に危険なフロンティアAIモデル」に対するより強力な政府監督を求めていました。
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日本の安保・政策への含意
この一件は「AI覇権競争における国家関与の限界」をめぐる米国内の深刻な亀裂を露呈しています。
注目すべき点は三つです。第一に、ボランタリーな枠組みすら「規制への滑り台」として産業界が拒否するほど、米国のAI政策はシリコンバレーへの忖度が極端に強まっているということ。第二に、「中国に遅れをとる」という論理が規制回避の万能の盾になっているという構造的問題です。この論法は日本でも安保3文書の「総合的な国力」論と酷似した危うさを持っています。第三に、AnthropicがPentagonとの契約をめぐって軍事転用・監視への使用を拒んだ案件が「サプライチェーンリスク」として制裁された事実は、日本の防衛調達・デュアルユース政策にとっても重大な先例となります。
AI政策における民主的監督の欠如は、日本が独自の枠組みを模索する上でも他山の石とすべき事例です。
The post トランプ大統領「署名せず」に終わったAI大統領令(草案)の概要 first appeared on 馬淵澄夫(まぶちすみお)奈良県第1区 前衆議院議員.
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