2026/7/31
2026年3月12日、米TIME誌が選ぶ「世界で最も素晴らしい場所」に「リゾナーレ下関」が選出されました。星野リゾートの施設が単体でこの部門に選ばれるのは史上初めてとのこと。関門海峡を望む全187室の客室、あるかぽーとエリアの新しい顔として、下関の名前が世界に届いたことは率直に誇らしいニュースです。

一方で同じ年の6月30日、下関駅前・シーモール下関の核店舗である大丸下関店が、2027年8月末での閉店を発表しました。1950年の開業から76年、地域に根ざしてきた百貨店が、その歴史に幕を下ろします。この二つの出来事は、単なる「明るい話題」と「寂しい話題」の並びではありません。私は下関市の観光戦略を考えるうえで、両者の関係にこそ注目すべきだと考えています。
実は大丸下関店も、決して安売りの店ではありませんでした。むしろ中元商戦や贈答文化を通じて、地元の一定の消費力に支えられた、高付加価値の商いを続けてきた店です。つまりリゾナーレも大丸も、路線としては「高級」という点で共通しています。違うのは、その商いを支える客層がどこにいるかという一点です。
大丸を支えていたのは下関市民という有限の固定客層でした。人口減少と高齢化が進めば、地元客だけに依存する高付加価値業態は、いずれ立ち行かなくなります。対してリゾナーレを支えるのは、インバウンドや全国からの旅行需要、つまり市外・海外から新たに流入するお金です。ここで起きているのは「贅沢品の淘汰」ではなく、地域経済を支える主役が、地元の購買力から観光による外貨へと交代しているという構造そのものです。
下関市の観光戦略がカイキョーリボーンプロジェクトのように「外から呼び込む」ことに力を注ぐのは当然としても、それだけでは半分しか手を打てていない状態です。地域の活力は、外から来る一時的な消費だけでなく、そこに暮らす市民自身の消費力、つまり内需の厚みからしか本当には育ちません。
大丸下関店の跡地活用は現時点で未定とされています。ここでまた「高級路線の何か」を誘致するだけでは、同じ主役交代を繰り返すだけです。市民生活を支える機能を跡地にどう組み込むか。下関市の観光戦略と、市民の暮らしを支える内需戦略を、切り離さずに議論できるかどうかが問われています。跡地活用の議論の行方を、引き続き注視していきたいと思います。
この記事をシェアする
シライシ ソウ/51歳/男
ホーム>政党・政治家>白石 そう (シライシ ソウ)>下関の観光戦略、内需なき成長でいいのか