2026/5/23
〇江田憲司さんの引退表明の記事。
https://digital.asahi.com/articles/ASV5P3JHXV5POXIE01MM.html
仰ぎ見る通産省の先輩だっただけに、残念。私が通産省に入省した時には、橋本龍太郎通産大臣の秘書官として鳴らしていた。私が配属された部署は、その数年前に江田さんがいたところで、さまざまな伝説が残っていた。
橋本政権が誕生してからは、江田さんは首相の政務の首席秘書官。最大の大仕事は、大蔵省の分割などを柱とする行政改革。私は、通産省の大臣官房でその省庁再編などの行政改革に関わる特命チームの末席として、明治維新以来の歴史的な仕事に携わっていた。この頃の話は、1冊の本になるくらい書けることがあるが、ここでは割愛する。
私たちの共通する問題意識は、冷戦が終わってイデオロギー対立の時代からグローバリズムの時代になり、当時「世界の経済大国」と言われていた日本が世界のトップランナーとなりうる中で、明治以来の「西欧に追い付け追い越せ」のパターナリズム的行政機構を、理念や目的追求型の価値創造組織に転換することだった。それは、従来の官僚主導型の統治機構から、国民を巻き込んだ政治主導の統治システムに転換することを意味したから、当時の橋本行革に関わった多くの若手官僚が政治の世界に飛び出したのは必然だった。江田さん、松井孝治・現京都市長、萩原誠司・現美作市長、齊藤健・衆議院議員、後藤祐一・衆議院議員、高井崇志・現れいわ新選組副幹事長などなど。
そして、その多くがあえて自民党を選ばず野党のいばらの道を歩んだのは、国会議員になることが目的なのではなく、自民党を超えるもう一つの政権を担える政党を作るためだった。自民党政権でやれることは、選挙になんか出なくても官僚のままでもやれる。自民党政権ではできないことをやれる政党を作らなければ、日本が停滞の道を脱することはできない、と考えたのだ。
私たちのこの志は、実現していない。実現する兆しさえほぼ消えつつある。江田さんは、この間の政治活動についてこの記事では、
【初当選の時から掲げてきた政界再編がさらに遠のく中で退くことに「悔いはある」とする一方、「民意を厳粛に受け止める」と、サバサバした表情で語った】
としている。その上で、「今の野党の状況で政権をとることは120%あり得ない。再編の仕掛け人になれる政治家は見当たらない。小異を捨てて大同につき、自民に対峙できる政党を作ってほしい」とも語っている。
私は、この江田さんの引退は、省庁再編を中心とする行政改革と二大政党による政権交代を掲げた政治改革という「平成の改革」の挫折を示すものだと受け止める。私自身の中でも、2期の無所属での国会活動とそこから見える野党の状況を見て、江田さんより一足先に「平成の政治改革」の挫折を確信し、二大政党による政権交代の道をあきらめていた。
一方、同じく通産省の先輩の岡田克也さんは、先日の毎日新聞のインタビューで「次の衆院選に出馬するつもりはあるか」との問いに、「はい。野党を立て直す責任がある」と即答し、「国民民主党とは考え方が近いし、連合から応援してもらっているという共通点もあり、もっと距離を縮めるべきだと思う。原点に返って「野党でまとまり政権交代を目指す」という考え方にみんなが歩調をそろえることが大事だと思う」などと語っている。
⇒https://mainichi.jp/articles/20260519/k00/00m/010/100000c
残念ながら、インタビューを通じて岡田さんの敗因分析も今後の政治の方向性も平成の時代に時計の針が止まったままで、今の国民の政治への思いや社会の状況にまったく無頓着な、哀れなほどズレたもののように思えた。ちょうど、冷戦が終結した平成元年に結成された連合の組合員を対象する最近のアンケートで、先の衆院選での組合員の投票先の1位は自民党である、とのニュース記事も配信されていた。
⇒https://digital.asahi.com/articles/ASV5P3PTCV5PULFA004M.html
私は、70歳になる江田さんの判断は、国民の意識を敏感に捉えた賢明なものだったのだと思う。頭でっかちで独りよがりな政治ではなく、今の時代の国民の意識を捉えながら、一方でそれに迎合するのではなく、不透明な未来への灯となるような新しい政治理念を国民に投げかけられる政党が求められているのだと思う。二大政党論に囚われ、平成の政治改革の桎梏から逃れられない、民主党政権世代の政治家には無理だ。そういう意味では、中道改革連合の小川代表や階幹事長らには、期待している。絶対に民主党政権世代を野党の中心に戻してはいけない。
在野の私は、江田さんの志を引き継ぐ思いで、こうした既存野党の集合離散とは関わらない形で、新たな政治理念を打ち立てるためにしばし黙考し、近いうちに行動できるよう機会を窺ってまいりたい。
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